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代表あいさつ
長野が冬季オリンピックの準備で活気づいていた頃、私は大工になりました。当時、私が修行をさせていただいた安曇野では、棟梁が墨を付け、子方や職人が刻む、そんな風景が当然のように広がっていました。近年の林野庁のデータでは、木造軸組構法におけるプレカット率は9割を超え、工期短縮・加工精度の安定・コスト削減を軸に普及は上限近くに達しています。
そんな時代と逆行しているかもしれませんが、私たちは未だプレカットを採用していません。材木と向き合い墨を付ける作業は大工の醍醐味であり、花形でもあるからです。しかし、その墨付け作業で墨刺しが止まることが増えました。今までであれば経験則から当たり前のように施してきたことが、「本当にこれで良いのか、もっと工夫はできないのか」と考えるようになったからです。特に継手の配置や加工に伴う部材の断面欠損には神経を使うようになりました。例えば、男木と女木のバランス。男木を勝たすと女木が負ける。女木を勝たそうと思えば、今度は先に荷重を受ける男木が負ける。継手・仕口に限らずすべてにおいて、大工が刃物を入れた時点で真物からの部材強度は下がるからです。ならばそれをどう補うのか。部材の照りや起り、滑りや生き節の使い方など、手刻みだからこそ可能な木との対話を大切すること、そして設計の段階から木組みを考えるということを大切にすることで対応できると考えています。
時代が流れるに連れ、「家を建てる」時代から「家を買う」時代にシフトしている印象を受けます。住宅展示場に足を運びお気に入りの家を選び、自分らしさをカスタマイズする。そのスタイルはとても分かりやすく、私たち地場の工務店の多くは到底真似のできないことです。そのような時代の変化に対応できず、私たちの仕事もその大半がリフォームにとって代わりました。けれども、あまり悲観してはいません。
リフォームやリノベーション、そして再生工事には、新築と違った醍醐味があります。それは、手を付けてみないとわからないという点。たとえて言うなら医療現場の外科的要素です。工事を始めると建物の骨組みとなる躯体部分に想定外の不具合が生じていることがあります。補強や入替え等を検討し、最善策を導き出すことは困難を要しますが、それ以上にやりがいと達成感があります。安全を担保して、息を吹き返した建物を目の前にホッとする瞬間が好きです。
また、改修工事はそういった不具合の膿を出すだけに止まらず、先人の技能に触れる良い機会でもあります。それは技術のみならず、木と向き合う姿勢も学べます。例えば、昭和40年代以前の建物では、建替え前の家屋の木材を見えなくなる箇所で再利用していることが多くあります。釘を抜き、埃を払って次の生き場所を探すその姿勢は、ウッドショックにより木材の供給と価格が安定しない現代に手間暇をかけた家づくりを見直す良い糸口になるのかもしれません。
様々な想いに触れながら、自分の住まいを手掛ける気持ちで仕事をする毎日です。
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